· 

うつろふ

 この樹の葉が紅くなると、冬はもう目の前である。朝の最低気温が5度を下回ると、待っていましたとばかりに衣替えをする。

 ここに移った年に、樵の友だちが持ってきてくれた幼木は、年ごとに成長し、この時期紅に染まる。

 どうしてこんなにも鮮やかな色を持つのか、夏には、その片鱗も見せやしなかったくせに。わずか数日で紅に変わる。冬を暖かく迎えるための儀式なのだろうか。朝日を浴びた紅の葉は、その姿を最も美しく輝かせる。

 冬支度を始めた。当面の薪はあるのだが、多いに越したことはない。あちこちから貰った木は、夏中藪に放り出していた。それを片っ端から切るのだ。電動ノコギリの音が響き渡る。木屑が飛び散る。私は、右腕を震わせながら、ギュンギュン薪を作る。これからが肉体労働の季節なのだ。冬が始まると、俄然元気がみなぎる私である。

 冬はいい。すごく、いい。

 薪作りが終わったら、雪がくるだろうか。