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夏休み

 北岳制覇に気を良くした私は、次なる山頂を目指すことにした。

 それは、どうみても無謀と思えるランクだった。

 だが、この機会を逃したら、自力で行くことは考えにくい。

 こういった場合、勢いも必要だ。

 山行まで約ひと月ある、それまでトレーニングを積んで臨もう。

 と、北岳帰りに決意して、自主練を開始した。

 二ツ箭山に登り鎖場の練習。

 近所のボルダリング施設で岩登りの練習。

 東吾妻山で高度調整の早足登山。

 日々、足指を使ったスクワット。

 こう書き連ねると、すげー頑張ってるみたいだが、実際は、全然足りていない。

 何しろ、目的の山は、立山アルペンルートにある「剱岳」なのである。

 YouTubeでのイメージトレーニングも欠かさなかった。

 登った人のコメントを読んであれこれ想像した。

 しかし、いまひとつ、自信が湧いてこない。

 天気予報では、大型台風の通過で晴れが予想されていた。

 もう、こうなったら、覚悟を決めて挑むしかない。

 なのに・・・

 刻々と変わる天気予報。

 なぜか、前線が富山県に停滞。

 剱岳登頂は、ずっと岩場なので雨が降ると登頂は厳しい。

 カニのたてばいやよこばいと言った、際どい岩場が多いのだ。

 今回のリーダが、決断した。

 中止

 少し、ホッとする自分がいた。

 つまり、まだ、早かったのだ。

 私が登るには、早い山だったのだ。

 立山行きはキャンセルになったが、山行がなくなったわけではない。

 天気予報とにらめっこして、行き先が二転三転した。

 何しろ、沖縄以外は、ほぼ雨模様なのだ。

 その中で、奇跡的にポッカリと晴れマークが出てる場所があった。

 山形県と秋田県の県境にそびえる、「鳥海山」である。

 出発当日の朝、バタバタと行き先が決まり、パッキングをし直し、山小屋の予約をした。

 鳥海山は、一度登ったことがる。

 ずいぶん前になるが山容は分かっている。

 剣岳の時のような不安な気持ちは、全くない。

 曇天の中だが、元気に出発した。

 日本海に出ると、湿った潮風が吹き抜けたが、穏やかな空模様だった。

 ただ、鳥海山は、雲の中。

 明朝の太陽を期待する。

 快適すぎる登り口の山小屋で早めの消灯となった。

 翌朝

 いいぞ、いいぞ、いいぞーーー。

 予想通りのお天気。

 時折、ガスが行き過ぎるが、暑からず、寒からず、最高の登山日和。

 片道4時間、休憩を入れると5時間越えの行程が始まった。

 整備された登山道は、歩きやすいとも言えず、石畳の上をカツカツと登る。

 あー、登る、登る、登るー。

 木道も、ハシゴも、岩場も、雪渓も。

 ぐんぐん、ぐんぐん、ひたすら登るのだ。

 朝6時に出発して、頂上に12時過ぎ。

 外輪山コースを選んだので、約1時間プラスされた登りになった。

 ゆっくりと昼ごはん&碧い月珈琲で栄養補給。

 出発地点へ戻ったのは、午後4時少し前だった。

 合計10時間の山行。

 これって、剣岳よりキツかったかも!?

 しかしながら、ものすごーく楽しい山行でした。

 下山後の、冷え冷えなりんごジュース、めっちゃうまかったぁ。

 っと。

 剣岳を諦めたわけではない。

 今の勢いでなら、登れそうな気がする。

 結果は、乞うご期待。

 なので、またまたお休みします。