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休業174日目

秋の日

 ひと月半ぶりの山登り。

 雲は多めだったが、青空も澄み渡りまずまずの空模様。

 ちょっとズルして、天元台のロープウェイとリフトを乗り継いで、いきなり1,500m高地へワープしてしまった。

 飯豊山登山以来なので、あまり無理はしないで行こう。

 リフトの最終地点から、わずか30分登っただけで、森林限界を超え見晴らしのいい天空散歩道に出た。当初の予定は、西吾妻経由西大てんだったが、同じ距離で反対方向に行くと東大てんがあると気づいた。途中変更は良い山行とは言えないが、地図もあるし、危険箇所もなさそうだし、西大てんは、何度か行ったことがあるので、東大てんに行くことにした。

 一旦、少し降り。それからは木道を進む。池塘が点在する湿地帯は、静かに色を落とし、草紅葉が始まっていた。

 整備された木道を、スキップするくらいの足取りで歩いて行く。日本百名山の西吾妻へ登る人はそれなりにいるが、浄土平までの縦走路にもなっている東大てんへ行く人は、殆どいない。数人とすれ違ったが、時間的に別なルートから来たのだろう。

 

 

 青紫のリンドウが、木道に沿って咲き続けている。りんどうは、午前中しか花が開かない。しかも、ほんのわずか密やかに咲くのだ。いい時に来たなぁ。

 静かだった。木道に響く自分の足音しか聞こえない。

 こんないい場所、何で今まで来なかったんだろう。

 東大てんの頂上は、木々が生い茂り眺望は望めない。が、その周辺は、眺めがとても良いのだ。吾妻連峰がずーっと見渡せる。

 頂上付近で会ったグループは、早朝に浄土平から縦走してきたと言っていた。

 片道6時間である。しかも、今日中に浄土平へ戻ると言っていた。

 通常は、避難小屋1泊のコースである。2泊で計画する人もいるくらいのルートだ。

 キツいっすよー。と、笑い飛ばしながら、スタコラさっさと去っていった。

 若いって素晴らしい。

 彼らの先に見える一切経山を確認したら、なんか、自分も行けそうな気がしてきた。

 よし、いつか行ってみよう。向こうからでもいいかも。

 でも、この辺りは、熊ちゃんたちのテリトリーなのよね。単独は、やめようっと。

 

 彼らを見送りながら、おにぎりを頬張り。あれこれ夢想した。

 のんびりしたつもりもなかったが、気がつくとリフトの最終時間が迫っていた。下りは、リフトを使わず降りようと思っていたが、思いの外遊んでいたらしい。

 ロープウェイの最終時間もあるので、ここは文明の力に頼り、リフトで下山した。

 薄曇りだった空は、次第に雲行きが怪しくなり、ポツリと雨粒を数滴落とした。

 ああ、これは、雨粒ではなく。雲の中の水滴なのか。んん。それが、雨か。

 降りのリフトに揺られながら、ぼんやりと、取り止めもなく考えている自分が、ものすごく幸せなのだなぁと感じた。

 最後駆け足になったが、とても楽しい山行だった。

 

 スーッとしたメントールの香りのするシラタマノキ。まんまるの実を付けていた。