· 

静か

 お盆休みに入り、行き交う車も少ない。

 雨が続いているので、とても静かである。

 いや、静かというのとは少し違うか。

 屋根に当たる雨音が、日常の音をかき消しているのだ。

 まだ青い栗坊主が、ゴトンと屋根に落ちてくる音。

 雫が勢いついてバサリと落ちる音。

 ひぐらしも黙り。

 セミも黙り。

 蚊も休戦中。

 夏野菜が成長を止め。

 エノコログサが穂を出し始めた。

 父の庭から移植したむくげが、次々と花を咲かせている。

 季節が変わり始めた。

 周りの木々が成長したのもあり、夏の間は、あまり陽が差し込まない。涼しくていいのだが、じっとりとした湿度には、どうしようもない。玄関で扇風機を回すのが、ささやかな対策である。

 と思っていたら、一気に秋の気配である。

 

 雨の中、早々に盆の墓参りを済ませた。

 母への食料も送った。

 混雑したスーパーで買い物するのは嫌なので、早くから開いている店で買い込んだ。

 おはぎや果物。好物のケーキなど。

 年齢をかさむ程甘いものを欲するようだ。

 あとどれくらい元気でいるか分からないが、人生末期になって我慢させるより、好きな物だけ食べている方がいいと思う。その方が、精神的に安定すると思っている。

 健康で長生きしてほしい。

 そんなことは、全く思っていない。

 すでに何年も医者の薬で現状を保っているので、健康というワードは当てはまらない。

 元気ではある。

 それで良い。

 無理に優しくする必要もない。

 そう思ったら、少し気持ちが楽になった。

 母のあれこれに腹が立つのは、自分を基準に考えているからに過ぎない。

 追い詰めたいのに、それはやってはいけない。

 その戦いがあるからだった。

 何も気づかずにここまで生きてきたのだから、このまま知らずに終えれば良いのだ。

 私の中のモヤモヤは、血の繋がりがある故のわだかまりである。

 なんか。

 なんかね。

 もう、どうでも良くなってきた。

 諦めとかではなく、無理に受け入れることも、突っぱねることも、ないよね。

 残された人生の少しの補助をすれば良いだけ。

 それだけでいいんだ。

 

 何かと、誰かと比べても、無意味だとやっと分かった。

 

 ダメ元で植えたカボチャ。

 草に紛れながらも、ちゃんと実を結んでいた。

 美味しくなれよ〜