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復帰登山

 秋晴れの日、待ちに待った復帰登山。

 と言っても、負傷した小指ちゃんを考慮して、予定の磐梯山は見送ることにした。

 安達太良山も手招きしているが、ぐっと我慢。

 どうしても行かねばならぬ場所へ。

 平日だが、紅葉シーズン真っ只中の裏磐梯は車が多い。

 八方台駐車場は、すでに満車。

 少し先の第二駐車場へ移動。

 ま、5分と変わらない。

 登山靴が懐かしい。

 ちょっとだけ、小指ちゃんに違和感があるが、大丈夫だろう。

 登山装備した人のほとんどが磐梯山へ登って行く。

 私は、八方台駐車場の奥から反対側の猫魔ヶ岳へ登り出した。

 ブナ林は、黄色く色づき、落ちてくる秋の木漏れ日は黄金色だ。

 

 ゆるりとした登りが心地よい。

 この道は、やっぱり秋が美しい。

 山に登れる嬉しさで、ついつい足が速くなってしまう。

 が、今回は、復帰登山だ。

 のんびり行こう。

 しかし、申し訳ないくらい、気持ちがいい。

 すれ違う人もほとんどなく、ブナ林を独り占め。

 今年は、ブナの実が少ない。

 くまちゃんの好物なので、実が少ないと出没もないかな。

 それでも、くまよけの鈴は、チリリンと山に吸い込まれて行く。

 

 木漏れ日を浴びる苔も美しい。

 しばらく行くと、先の方から女性の歓声が聞こえて来た。

 一瞬にして静寂が消えたが、貸切ではないのだから、当然である。

 ゆっくり登っているつもりだったが、あっという間に、女性グループに追いついた。

 ああ、やっぱり。

 尾根に出て視界が開けたから歓声が上がったのね。

 私よりはるかに年上のお姉様方だった。

 3人寄ればかしましい。

 するりと追い越した。

 後方でしばらく賑やかな声が響いていた。

 息が乱れる事もなく、小指ちゃんも問題ない。

 

 程なくして、猫魔ヶ岳登頂。

 だが、目的地はここではない。

 そこから一旦下って、さらに登り返した先に行く。

 後ろのお姉様方は、ここがゴールだろう。

 ちゃっちゃと先へ行こう。

 タイムを見ると、いつもと変わらなかった。

 あれ、ゆっくりのつもりだったのに・・・

 まぁいい。

 ぐんぐんと下る。

 あれ、こんなに下ったっけ?

 毎回そう思う。

 およそ15分で目的地到着。

 雄国沼が一望できる。

 薄雲は多少あるが、会津の山々がずうっと見渡せる。

 独り占めである。

 ここには、友人が眠っている。

 彼女の大好きなコーヒーをコップに注いだ。

 自分も一口飲む。

 あああぁ、美味い。

 誰もいないうちにお昼ご飯にする。

 しかし、あまり食が進まない。

 おやつも食べてないのになぁ。

 と、時計をよく見たら、1時間勘違いしていた。

 そりゃ、お腹空かないわ。

 そうこうしている内に、女性の賑やかな声が聞こえてきた。

 えええぇ、まじか。

 あのおばさん・・いや、お姉様方ここまで来たのか!!

 慌てておにぎりを飲み込み、さっさと片付けた。

 到着したお姉様方は、そりゃ〜賑やか。

 うううう。

 また、来よう。

 にしても、元気なお姉様達だわ。

 帰りに一つ事件があったが、それはまたの機会に。

 復帰登山そのものは、何の問題もなく無事終了。

 翌日も、翌々日も筋肉痛になる事はなかった。

 下山後、小指は少し腫れたが、その後急速に良くなった。

 今は、もう、違和感もあまりない。

 歩いて治せ!?

 って事か。

 磐梯山も安達太良山も大丈夫そうである。