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付けてみた

 値段、付けてみました。

 まだ一つも売れていません。

 ってか、あまりの寒さに、お客様は、ほとんどいませんので・・・

 売れようがないのが実情。

 ついている値段は、あってないようなモノ。

 お気軽に値切ってくださいまし。

 詰まるところ、断捨離でございます。

 あってもなくてもいいものは、手放そうと決意。

 仕舞い込んでいた物は、宝物ではないと自覚。

 世の中には、それらを欲する人もいるかも知れない。

 どこかの誰かの宝物になりますように。


 

 先日、長い間仕舞い込んでいたある物を旅立たせた。

 大正生まれの父が持っていた鉛筆1ダースである。

 多分、昭和前半のものだと思う。

 もったいなくて使えなかったのだろう。

 それを手にした私も、もったいなくて使えない。

 飾るのも、なんか違うし。

 どうしたものかと、長い間悩んでいた。

 持っていてもなぁ。

 というか、活用させたい。

 「古い鉛筆」で検索してみた。

 この銘柄の鉛筆はヒットしなかった。

 そんな中「鉛筆中毒展」という妙な展示会をしている店にたどり着いた。

 世の中には、いろんなマニアがいる。

 鉛筆だって、たまらなく好きな人がいるのだ。

 しばらく悩んだが、その店に連絡してみた。

 買い取ってくれると返事が来た。

 そうか、需要はあるのだな。

 この鉛筆もやっと光のある場所に出られるのか。

 じんわりと嬉しくなった。

 しかし、私は最初から売る気はなかった。

 父の心に値段はつけられない。

 引き受けてくれる方へ繋ぎたい。

 誰かの宝物になってほしい。

 ただ、それだけだ。

 それでも、お店のご好意で着払いで送らせてもらった。

 ついでに、ちょっと古い文房具やポストカードなども同封した。

 寒波が来る日だったが、荷物は無事着いたようだ。

 「全て最後まで見届けますのでご安心ください」

 到着のメールに書かれていた文を読み。

 心がほんわか暖かくなった。

 そして、少しだけ肩の荷が降りた。気がした。

 

 いつか、その店を尋ねてみたいと思う。

 東京高円寺にある「ハチマクラ」という名の店である。

 蜂の枕?

 店の名の由来は、行った時に聞いてみよう。

 東京、ずいぶん長い事行ってないなぁ。