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巡礼は続く

 今回の福岡滞在は、三泊四日である。

 博多駅からほど近いホテルに連泊した。

 朝食が美味しいと評判だったが、結局一度も食べなかった。

 ま、ホテルの朝食は、安くないからね。

 三日目は、JRに揺られ、小倉方面の福間駅まで行った。

 窓からの風景は、予想に反して、住宅地が連なる街が続いていた。

 待ち合わせの駅に到着すると、懐かしい人が待っていてくれた。

 前回少し書いたが、震災後の朗読ツアーを企画してくれた方である。

 田中 時彦さん

 北九州漫画ミュージアムの館長で、童画家で、あぜのまち絵本美術館の館長さんである。

 あぜのまち絵本美術館は、時さんが古民家再生をして誕生させた美術館である。

 2014年にオープンしているのだが、なかなか伺えないでいた。

 今回、やっと重い腰を上げたのだ。

 残念ながら、コロナ禍もあり現在休館中なのだが、たくさんの絵本が居心地の良い空間に並べられており、時間を忘れて楽しめる美術館である。

 駅からはかなり遠いのだが、歩いてくる強者もいるらしい。

 駅前の住宅地とは異なり、のどかな田園が広がる唐津街道沿いの宿場である。

 カエルの鳴き声に、少しほっとした。

 しかし、ご縁がなかったら、尋ねる事はなかっただろうなぁと思うと、実に不思議な気持ちになる。

 この日は、朗読コンサートでピアノを弾いてくれた古木 雅士くんも来てくれた。

 いつの間にか、二人の娘のお父さんになっていた。

 時間、流れたなぁ〜

 古木くんが車を出してくれて、近隣を散策。

 宮地嶽神社の光の道に到着。

 ずっーーーと先は、海。

 海まで参道が真っ直ぐに伸び、いや違う。

 海から神社まで参道がまっすぐに伸びているのだ。

 毎年2回。夕日が参道をまっすぐに照らし、光の道ができるのだ。

 計算された事なのだろうが、神秘だねぇ。

 近くに海のない暮らしをしているので、眼下に海が見えるだけで、ものすごい特別感があるし、ワクワクが止まらない。

 で、海といえば、海鮮ですぜ。

 地元の魚が食べたい!!

 わがままなリクエスト

 人気のお店で並ぶの覚悟だったけど、すんなり入店、ランチもギリセーフ。

 お魚の名前、忘れちゃったけど、めちゃウマで、もちろん完食。

 知らない街を走りながら、初めての場所を訪ね、違った空気を感じた。

 時さんからは自身が執筆した冊子を、古木くんからはベスト盤のCDを頂いた。

 今も活動を続ける二人から、じわーっと刺激を受けた。

 私は、長い事、表現する事から逃げていた。

 何の為に、誰の為に。

 そんな事に躓いていた。

 コロナ禍を理由に再開を避けていたが。

 本当の理由は、意味を見出す事への無意味さを思い知ったに過ぎない。

 ま、ぐうたらなのよね。

 そもそもが。

 こうして、お世話になった人を巡礼していると、中途半端で終わろうとしていた自分が情けなくなる。

 せめて、ひとつでも納得できるカタチを表すべき。

 だよな。

 

 さて、福岡は、何を食べても美味しい。

 駅のホームで、立ち食いうどんも食べてきた。

 福岡のうどんは、コシのない柔らかい麺である。

 透明なお出汁にやわうどん、かしわ(鶏肉)の甘辛煮がのってるシンプルうどん。

 うまかった。

 色々と下調べして食べたいものをリストアップしていたのだけど、1人の食事だとそうそう沢山食べられない。

 それが悔しい。

 昼にご馳走食べちゃうと、夕食時にお腹が空かない。

 結局、滞在中の夕食は、駅やデパ地下で珍しそうなお惣菜を買って、ホテルで食べていた。しかし、その方がいろんな種類を食べられて良かったし、夕飯は、入浴後に食べたい派なので、結果オーライである。

 ホテルには、温泉大浴場があり、都会にいながら夜空を眺めての露天風呂は、なかなかどうして気持ちよかった。

 そうこうしている内に、帰る日になっていた。

 恒例になった朝の散歩をして、荷物をまとめチャックアウト。

 ちなみに、毎日10,000歩以上歩いていた。

 都会の方が、歩く機会が多いなぁ。

 毎日通った駅地下でお土産を吟味し、早めのお昼ご飯を食べる事にした。

 最後の食事こそは、食べたかったものを食べるぞぉ。

 帰るだけなので、昼からビールを注文。

 明太子と高菜漬けは、食べ放題。

 ご飯と味噌汁もおかわり自由という、太っ腹なお店だった。

 私の一番好きな魚。

 鯖である。

 博多の郷土料理のごま鯖を堪能した。

 甘めのごまだれとワサビと海苔。

 鯖は、足が速いので刺身ではなかなか食べられない。

 此処ならではの味である。

 あまりの美味しさに、ご飯おかわりしましたとさ。

 無事帰りの飛行機へ。

 今度こそ富士山を・・・・

 この後、雲がぐんぐん湧いてきて、なーんも見えませんでした。

 じゃんねーん。