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登ったぁ

 10月は、毎週山に登っていた。

 ネットニュースでは、毎日のように滑落や遭難の記事を見る。

 特に今年は、目に付いた。

 明日は我が身と戒めながら、記事を読む。

 年々体力が衰えている。と自覚しながら、無理をしない登山を心掛ける。

 利尻岳を終えたことで、やり切った感があった。

 だが、秋こそ、登山にはもってこいの季節。

 10月初め、ずっと先送りになっていた岩手の「焼石岳」へと向かった。

 この山は、それほど高くはないのだが、アプローチが長い。

 登りで3時間半である。

 まぁまぁの登りなので、ずっと敬遠していた。

 しかし、利尻岳を経験すれば、3時間半など怖くない。

 この勢いがあるうちに、登ってしまおう。

 登山口近くに宿はあるのだが、あいにく満室。

 夜間入りの車中泊するほどのエネルギーは、、、ない。

 奥州市水沢のビジネスホテルに宿を取った。

 朝食付きだったので、それを食べてから〜と思っていたら、少し出遅れてしまった。

 しかし、それが後に吉となる。

 岩手は、街を離れると、ガソリンスタンドとコンビニ、信号がなくなる。

 これまで、何度もガス欠になりそうになっている。

 今回は、そんなヘマはしない。

 ホテルから40分くらいなはずだったが、思ったよりも遠かった。

 林道に入ると、悪路と噂されていたが、轍も穴もなく、整備されていた。

 駐車場に着くと7〜8台の先陣たちが、すでに出発している。

 トイレを済ませて、いざ出発だ。

 初めての山は、ワクワクするが、距離感が掴めないので、ソワソワもする。

 空模様は、雲の中。風があるのが、気がかり。

 平地は晴れているが、山には雲がかかっている。

 ま、仕方ない。

 樹林帯をぐんぐん登る。

 と言っても、それほど急な場所はない。

 いくつかの沼を超えて、小川に沿ってというか、小川の中の石を選んで歩く感じ。

 ゴアテックスの靴だが、濡れたくないので、足場に気を使う。

 

 水場が多いので、苔が美しい。

 避難小屋を過ぎると、森林限界を越える。

 見晴らしが良くなるが、あいにくの雲の中。

 見えたり、見えなかったり。

 途中、登山道の工事をしていた。

 仮の道が、ものすごく危うい道だった。

 滑ったら、谷底まで落ちてしまう。

 慎重に登る。

 こんな山奥で作業する人も大変だ。

 どうやら、山小屋に泊まって作業しているらしい。

 来年来たら、新しい登山道になっているのかな。

 と、思いつつ尾根に出た。

 あああああぁ。

 うほほほぉ。

 天空の草原が現れた。

 黄金色の草紅葉。

 

 風の谷のナウシカが浮かんできた。

 ランランララ、ランランラン。

 歌ってた。

 風がものすごい。

 下山して来る人が増えてきた。

 何も見えかなったと、残念そうだった。

 そうか、まぁ、仕方ない。

 ともかく、行ってみよう。

 風はどんどん強くなる。

 ストックで踏ん張らないと、吹き飛ばされそうだ。

 しかし、この風に雲が飛ばされるはず。

 目指せ、頂上。

 

 健気な花も咲いているではないか。

 初夏は、お花畑になるらしい。

 その時期もいいなぁ。

 ま、名前はあんまり知らないけどね。

 一際強い風が吹き抜けた後、景色が一気に開けた。

 あまりの美しさに、風に負けないくらいの歓声を上げた。

 こうなったら、一気に頂上へ向かう。

 煽られないように注意しながら、踏ん張って登った。

 ちょっとした地形で風が全く当たらない場所もある。

 そこをオアシスと呼んで、一息。

 なんとか、登頂成功。

 僅かな時間差で雲が突き抜け、素晴らしい景色が見られた。

 だが、山頂は強風につき、わずか数分で退去。

 風の当たらない場所まで降りて、手早くお昼ご飯を食べた。

 後は、下るだけ。

 のんびり風景を楽しむのは、次回に持ち越しである。

 風、恐るべし。

 朝8時にスタートして、戻ってきたのは午後3時。

 7時間の山行だった。

 この日は、温泉宿でのんびり疲れを癒す。

 宿まで45分のはずだが。

 いや、45分なのだが。

 どんどん山の中へ入り、なのに、道は立派で。

 でも、対向車が来ない。家もない。

 異次元に入った?

 と心配になった頃、里にたどり着き、宿に到着。

 ほっ。

 温泉に浸かり、疲れを癒やし。

 冷えひえビールと美味しいご飯たらふく食べて。

 消費カロリーと摂取カロリー、相殺か。

 いつもそう。

 下山後のご飯は、美味過ぎる。

 さて翌朝。

 朝風呂入って、またまたたらふく食べて、ベタな観光スポットを巡りましたとさ。

 岩手は、いい。

 また、行こう。