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チャンプル

 沖縄は、宮古島生まれのワンコ。

 保護された母親のお腹には、3匹が宿っていた。

 南国生まれの子ワンコは、飛行機に乗って遥か湘南の保護施設までやって来た。

 そうしてその中の一匹が、友人宅のワンコとなった。

 らしい。

 その名もチャンプルくん。

 インターフォンを鳴らした、いや、車を駐車場に入れた時から、熱烈歓迎で吠えまくられた。

 知らない車が来ると、ちゃんと吠えて教えてくれるそうだ。

 わんわん吠えながらのクンクンチェックが済むと、手のひらをペロリ。

 これで友だち認定が終了である。

 

 ふと思い立って、車を走らせた。

 向かうは、伊豆半島の入り口、真鶴。

 友人との出会いは、会津時代。

 四半世紀の付き合いになる。

 だが、お互い住処を変えているので、滅多に会うことはない。

 遠くは、香川県の直島にいた事もある。

 数年前に湘南へ越してきて、その後真鶴でマイホームを手に入れた。

 年賀状をもらうたび、遊びにおいでとメッセージ。

 直島よりずっと近くなったのだが。

 神奈川とはいえ、ほぼ伊豆である。

 三春から車で行ったら、5時間はかかる。

 なんだか、直島より遠く感じてしまい、なかなか行けずにいた。

 ちなみに、直島へは2回行っている。

 今回、ちょうど関東方面に行っていたので、足を伸ばすことにした。

 何ならついでに、ちょっと江ノ島見学でもするか。

 江ノ島は、中学の修学旅行で泊まったのだ。

 ネットで調べてみると、泊まった旅館は、まだ現役で営業している。

 

 海岸線に浮かぶ島は、どこぞの異国のようだ。

 そうだ、その昔上京したての頃、小田急線を乗り継いで、江ノ島まで行った事があったっけ。

 海岸を散歩してたら、ナンパされまくった。

 バイク乗りのおにーさんに声をかけられた時は、少しだけ揺らいだけど。

 連れ去られたら、終わりだと気がつき、そっぽを向いた。

 あの時は、海を見て満足して、早々に電車で帰ったっけなぁ。

 42年前だわ。

 中学の修学旅行は、更に3年遡る。

 あああ、これが還暦の現実じゃ。

 現代の江ノ島は、インバウンド効果で8割が外国人。

 そして、物価が高い。

 ただ、あの旅館は、あの頃より少しお色直しされて、現役旅館続行中。

 江ノ島を満喫して、目的地へと向かう。

 友人の仕事終わりに合わせて、のんびりと下道を走らせる。

 そして、少し迷いながらも無事に到着した友人宅で、チャンプルの大歓迎を受けた。

 数年ぶりに会う友人夫婦は、少しだけ歳を重ねたが。

 過ぎ去った時間など、微塵も感じず。

 出会った頃と少しも変わらぬ笑顔で。

 冷えたビールで乾杯した。

 

 知らん魚も知ってる魚も。

 モーレツに美味しゅうございました。

 延々とおしゃべりは続き、皿のお魚は、私のお腹に消えて行きましたとさ。

 翌日は、予報通り雨。

 それでも、真鶴半島の森を抜けて、名所「三ツ石」を見に行き。

 パシャリ。

 短い滞在ではあったけど、美味しい魚と、自家米、チャンプルのペロペロ攻撃、海の匂いと森の深さ。

 いいところだなぁ。

 しみじみ感じたよ。

 友人は、自分で米を作っている。

 ただ、米を作りたい一心で米を作っている。

 今回、その米をご馳走になった。

 美味かった。

 ただただ、美味かった。

 彼女の米作りに関しては、また別の場所で話したい。

 「うらばんだいあそび」の友人とはまた違ったアプローチで会津にやって来て、米作りを学んでいた。

 昼は田んぼで農作業、夜はスーパーのレジ係。

 そんな会津時代に出会ったのだ。

 私は、こういう人たちの影響をたくさん受け、今に至る。

 さて、次回は、庭のミカンが熟す頃、ミカン狩りを兼ねて真鶴へ再訪しよう。

 思ったほど遠くなかった、真鶴だわ。

 

 遠出する時は、いつも、「母に何事も起きません様に」と願っているのだが。

 敬老の日に、母にあるプレゼントをしたところ、驚くべき変化が現れたのだ。

 おかげで、心置きなく出かける事ができた。

 その意外な効果とは・・・

 また次回。